ベビーカステラ工場

俺毛玉許せないんだよ

推し選手が暫く見れなさそうで。

野球やサッカー、スポーツは専らテレビで見る…そんな私の球場通いも4年目に突入しようとしている。

2016年8月。当時は高校野球が主だったが、応援していた高校の選手が大学でも1年生ながら活躍している・そのチームの試合が(比較的)近くで催されると知って、私は深く考えずとりあえず球場へ足を運ぶことにした。

思えば、これが大学野球と社会人野球へ足を踏み入れる大きなキッカケだった。(後にこの2つの沼によって私の遠征力は格段に上がることになるが、その辺は今回の話にあまり関係ない。)

 

その日見に行った大会は、大会と呼んでいいのかわからないほど小さなもので、県内の3チーム(社会人2、大学1)と県外から招待された大学1チームがリーグ戦形式で戦うというものだった。

この時私はその県外のチーム(にいる推し高校卒の選手)目当てで来たのだが、うっかり社会人チームにすてきな選手を見つけてしまう。巧打者、堅実な守備、ムードメーカー。それはもう見ていて楽しい選手で。野球写真を撮り始めてまだ日が浅かった私は、その選手の軽快な動きやコロコロと変わる表情を追うのに夢中になった。

推しを見つけて見事社会人沼にズブズブと浸かり始めた私は、地区連盟のブログ(更新頻度がめちゃめちゃ低くてマイペース)とJABAの公式(探すのが大変)を頼りにしながら、年1、2回社会人野球を見に行くようになった。

少なくね?と思われるかもしれないし実際私もそう思うが、チームの公式サイトなどが無いので、連盟から数個の大会情報が提供される以外本当に何も無いのだ……………。(大会自体は流石にもう少しあるが、参加してなかったりするものもあるので、ね…。)

勿論、OP戦とか何も分からない。マジで。苦し紛れに対戦しそうな大学や社会人チームのサイトにお邪魔しスケジュールを漁ってみたが、無い。そもそもオープン戦という概念が無いのでは…?という失礼極まりない推測が頭に浮かぶ始末だ。

 

見れる機会が少ないこと、珍しくハッキリとした「推し選手」ができたこと(高校大学あちこちに推しはいるけれど、番号争いや卒業があるからか広く浅くが多い)、しかも球場へ行けば100%居るしほぼ100%スタメンだったということもあり、私の中で社会人野球の優先順位高まっていく一方だった。

しかしずっとスタメンというのも本当にすごいことだなあ…大好き、ありがとうございます!!

 

 

 

 

 

 

 

「○○(推し)さん、今季試合出ないってよ」

 

 

今年の春のJABA大会は会場が少し遠いこともあり、早い段階でもう宿を予約していた。今季初観戦で推し選手を見る気満々だった。そこに友人からのこの一文。彼女はきっと優しさで教えてくれたのだと思うけど…ありがとうだけど…突然のそれ、爆弾だよ……。

ダメージがでかすぎる。でかすぎて、目に入った瞬間は"""無"""だった。

1時間ほどで感情は戻ってきたが語彙は死んでいたので、とりあえず友人には「ほんと?」とだけ返した。

(ちなみに彼女は野球が好きなわけでも社会人野球に特別興味があるわけでもないが、私の試合感想や推し選手の話を聞いてくれる仏である。)

 

 

幸せなことに、学生スポーツ以外で"推し選手の引退"を未だ経験したことがない私は、「大好きな選手が突然いなくなるとやっぱり泣いてしまうくらい悲しいのかしら。もっと見とけばよかった、と後悔するのかしら」と時々考えることがあったけれど。

 

いざそういう知らせを貰うと頭は真っ白。無の時間が終わると真っ先に浮かんでくるのは"引退"の二文字。その後は色々な考えや言葉がゴチャゴチャと頭の中に現れては消えてを繰り返していたような気がする。

「たしかに昨季の最終戦出てなかったしな」「年?何歳だったっけ?」「怪我が原因だったら一番嫌だな」

泣いたり暴れたりするくらい悲しむには、実感が全然足りなかった。

 

よくある、もっとたくさん見に行っとけば…という後悔もあまり浮かんでこなかった。まあ元が少ない分結構行ったしね。真夏の森山とか葛巻とか葛巻とか。ただ、遠くて諦めた釜石のことを思い出してちょっと後悔した。葛巻行けるんだから行けただろ。

 

 

 

私も友人も、基本めんどくさがりなので返信は気が向いたら…みたいなところがある。だからレスポンスはなくても平気なのだが、今回ばかりは「早く何か喋っておくれ…」と通知画面を何度も気にした(あの時「ほんと?」じゃなくちゃんと言葉を捻り出していれば返信早く来たかもね)。

プロ野球の経過だけを伝えてくれるスマホを眺めながらボンヤリとさらに別のことを考えた。社会人野球は楽しいし、推し選手の他にも気になる選手はいるし、これからも見に行くだろうけど、数年かけて上がった優先順位は少し下がるかな?

試合に必ず居た選手がグラウンドどころかベンチにも居ない。別の選手がそのポジションにつく。もはやわたしにとっては別のチームでは?

色々考えた。何も答えは出なかったけど。

 

 

ただ、私は歴も知識も浅いので正確なことは分からないが、社会人選手の引退って突然の知らせなのかもしれないなあ…と感じた。学生野球のように引退の期日がざっくり決まっているわけでもないし。情報を発信する手段を持たない社会人チームの勇退者を、私のような一ファンが把握するには、

シーズン開幕後現地に足を運ぶ→パンフレットを買う→名簿で名前を確認する。

これが多分普通。進退が確認できたからと言って、出来ることは「あの日が見納めだったのか」なんて考えるくらいだ。

そして、引退して野球部から完全に離れてしまったら、もう余程のことがない限りお顔を見ることも無いし、ファンを名乗ることもなかなか出来なくなる。写真なんて勝手に撮ったらそれはもうお縄かもしれない(そもそもアマ野球写真自体、選手や連盟の優しさで許されている部分はあるけど)。

 

学生野球やプロ野球選手の引退試合みたいに、見る側も「今日が最後」と思って気合入れられるって寂しいけど実はすごくありがたいことなのかも…とか。

 

 

 

 

 

一球速報でもツイッターでもない通知音が鳴って、スマホを見た。

「しばらくしたら復帰するみたい」

 

 

ほう?

 

ポコポコと数回に分けて送られてくる返信を見つめる。どうやら怪我でも引退でもないらしい。

 

 

良かった〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

本当に、この言葉以外出てこなかった。友人にもそう送った(流石に後でちゃんと色々返したけど笑)。

「しばらくしたら…」の"しばらく"がどれくらいかは分からなかった(1、2年と思っとけば良いと思うよ、とは言われた)けれど、引退について勝手に考えていた私にとっては"しばらく"の長さなんてどうでもよかった。復帰があるなら、3年でも10年でも待てそう。

良かった〜〜〜!!!と一息ついてから、勝手に推し選手を引退させてしまい大変申し訳ないなと反省した。引退したらお花くらい送りたいけど気味が悪いかなとか……つくづく、私は妄想リハーサルが大好きな女だな。しかし本当にごめんなさい…!

 

 

 

 

友人のおかげで今季初観戦で推し選手を拝むことは無理…と判明したものの、結局球場には行った。大好きな推し選手のいないチームを私はどんな風に見て撮るのか…自分自身すごく興味があった。八戸の宿にもしっかり泊まって、翌日球場へ向かった。

友人が教えてくれたとおり、推し選手の姿は無かった。やっぱりなと思いつつ、ついつい期待してしまう。いつも推し選手のいるあたりにカメラを向けてみたり、ベンチを何度も確認してみたり、もしかしたらスタンドにいたり…なんて思いながら姿を探してしまう。なんか山崎まさよしの歌にこういうのあったね。

 

 

試合の最初こそソワソワしていたものの、推し選手が居なくてもちゃんとそのチームの試合を楽しめている自分にホッとした。試合後、「次はいつ見れるっけ…」と予定を確認している私がいてよかった。だから余計に、試合には勝ってほしかったな!勝てばもう1試合見れたんだけどな!…なんて。

とにかく、推し選手が不在でも私はこのチームが好きだ!と分かって安心した。これで本当に3年でも10年でも50年でも待てるぞ〜〜〜!!

 

 

 

 

 

 

 

ところが。

 

 

それは高校野球県大会真っ只中、5月中旬のことだった。先月の大会で見れずじまいだった新人さんや気になる選手の活躍が気になって、私は花巻球場の都市対抗一次予選最終日を見に行った。

第1試合の第3代表決定戦が終わり、決勝戦の準備が始まる。シートノック開始のサイレンが鳴って、選手がグラウンドへ現れたその時。見慣れているけどとても久しぶりな番号が見えた。

 

ん?気のせいかな??そう思いながらもカメラで姿を追ってみる。

 

あれ???

 

 

推し選手、居るじゃん!!!!!!!!!!!!!!

 

 

私は叫びそうになった。が、不審者になりたくないので我慢した。えらい。

昨夏ぶり(9ヶ月ぶり!)の推し選手は相変わらず元気よく楽しそうにシートノックを受けていて。その姿がびっくりするくらい眩しくて。私は嬉しさで緩む頬をなんとかカメラで隠しつつ(果たして本当に隠せていたのか)、7分間その姿を追いかけた。

 

 

 

ノック後、少しの空き時間を使い友人に「居たよ……」と簡単だけど精一杯の報告をした。

 

 

 

 

横に座っていたお兄さんの話を盗み聞きした感じだと、推し選手はこれが今季初出場らしい。推し選手は本調子ではなさそうなものの、試合展開としては決勝のそれにふさわしいもので。昨年都市対抗本戦にも出場した、県内では絶対王者みたいなチームと接戦を繰り広げた。延長10回にサヨナラ負けをしてしまったけれど。

 

何度も見てきた見慣れた対戦カードだったけれど、こんなに惜しい負け方を見たのは初めてで。普段は悔しさを出さない選手が下を向いたまま動かない。その選手を支える選手もまた口を真一文字に結んでいて。推し選手もだった。「社会人野球でこんなに悔しい気持ちになることがあるのか」と思うほど、優勝と第一代表の座はついさっきまで彼らの本当に本当に本当にすぐ目の前にあった。

翌日になってもこの悔しさはモヤモヤと胸の中に残っていたが、推し選手のはつらつと野球をする姿を思い出すと元気が出た。やっぱ推しの存在ってすごい。

 

 

 

 

推し選手の居る居ないに一喜一憂していた私は、今季まだこのチームの勝ち試合を見れていないことに漸く気づいた。

今度は勝つところが見たいなあ。できれば、一次決勝と二次の敗復(どっちも延長戦でとても惜しかったよね…!)のリベンジを。そしてできれば、そこに推し選手がいてほしい。

 

 

 

今季は「球場に行けば絶対見れる」というわけにはいかなそうだけど、「今大会は居るかな、居ないかな」というワクワクも楽しめたらいいね。色んな選手の今まで撮れなかった表情や新たな一面も、この機会に見つけていけたら楽しそう。このチームをもっと知ってもっと好きになりながら、推し選手が正式に復帰する日を待てたら。

 

 

 

 

 

 

 

 

今季も来季も10年後も、今と変わらず笑顔が素敵なチームの中心選手でありますように。